こんにちはmachikoです。
先日、岐阜県美術館で開催された「グラフィックデザインの曙-加藤孝司とシルクスクリーン」展に行ってきました。
岐阜市出身のレジェンド、加藤孝司さんの仕事を一望できるこの展示。デザインが好きな人はもちろん、実は「印刷の仕組み」や「手仕事」に興味がある人にとっても、目からウロコの連続なんです。
今日は、展示の感動とともに「そもそもシルクスクリーンって何?」という基本から、その魅力をお伝えします。
そもそもシルクスクリーンとは何なのか?

シルクスクリーンを一言でいうと、メッシュ状の布(スクリーン)を使った「孔版画(こうはんが)」という技法です。
まず、木や金属の枠に、ナイロンやテトロンなどの細かい網目の布をピンと張ります。昔は「絹(シルク)」を使っていたのでこの名前がつきました。
次に、その網目の一部を薬品などでふさぎ、インクが通る場所と通らない場所を作ります。
これが「版」になります。
そして、その版の上にドロッとしたインクをのせ、「スキージ」と呼ばれるゴム製のヘラでグイッと押し出すように滑らせます。すると、網目が開いている部分だけインクが通り、下の紙や布にデザインが転写される……という仕組みです。
なぜシルクスクリーンが「最強」の印刷なのか

世の中には色々な印刷がありますが、シルクスクリーンには他の技法にはない圧倒的な強みがあります。
最大の魅力は、インクの「厚み」です。 一般的なオフセット印刷(雑誌やチラシなど)に比べて、シルクスクリーンは何倍もの厚さでインクをのせることができます。そのため、色が驚くほど鮮やかで、時間が経っても色あせにくい。さらに、少し盛り上がったような独特の質感が生まれます。
また、紙だけでなく、布、プラスチック、金属、ガラスなど、平らなものなら何にでも刷れるという万能さも、表現の幅を広げる大きな理由でした。
加藤孝司さんが見せた「職人の神業」

今回の展示で紹介されている加藤孝司さんの仕事は、まさにこのシルクスクリーンの限界に挑んだものでした。
特に注目してほしいのが「色の重なり」です。
シルクスクリーンは一色につき一枚の版が必要です。10色使いたければ、10回版を変えて、寸分違わぬ位置に重ねて刷らなければなりません。
加藤さんの作品は、その重なり(見当合わせ)が信じられないほど精密です。ズレが一切ない鋭いエッジ、そして計算し尽くされた色の発色。デジタルがなかった時代に、手作業でこれほど完璧な「色面」を作り上げた執念には、ただただ圧倒されます。
現代美術家の藤井光さんが制作した映像では、その緻密な工程の裏側が克明に記録されています。職人がインクの状態を見極め、一刷り一刷りに全神経を集中させる姿は、もはや芸術そのものでした。
時代を超えて輝く、究極のモダンデザイン

加藤さんのデザインは、今見ても全く古びていません。 パキッとした鮮やかな色彩と、カタカナを図形のように配置した大胆なタイポグラフィ。これらがシルクスクリーンの「厚みのある発色」と組み合わさることで、画面越しでは絶対に味わえない、物質としての存在感を放っています。
最後に
「印刷」という言葉からイメージする機械的な作業とは裏腹に、シルクスクリーンは「人間と道具の対話」から生まれる非常にクリエイティブな技法です。
加藤孝司さんの展示は、その手仕事の素晴らしさを感じることができました。

